RYUKAミニ講座6:ストレスマネジメントのすすめ(3)

ストレス状態をコントロールする

ストレス反応を低減するためのコーピング(対処)には、どのような方法があるでしょうか。ここでは、ストレス学者のラザルスとフォルクマンによるストレス・コーピングの考え方に基づき、過剰なストレス状態をコントロールするための対処行動を紹介します。

「問題焦点型」と「情動焦点型」

ラザラスらは、ストレス・コーピングを大きく2つに分類して説明しています。1つは、ストレスの原因と考えられる問題自体と向き合い、状況を分析するための情報を集めたり、解決策の考案や実行をするような対処のあり方です。これは、周囲の状況や自分自身の問題を解決するためになされる「問題焦点型」のコーピングといいます。
もう1つは、ストレスを受けることによって生じる情動的な苦痛を弱め、できれば解消するための「情動焦点型」です。情動焦点型コーピングはさらに、(1)物事を楽観的に捉えたり、見方を変えるなど、認知的な枠組みを変更するコーピング、(2)問題解決のために支援してくれる人を求めたり、気晴らしをしたり、あるいは特に何もせずに状況を静観するといった行動的なコーピングに分けられます。

コーピングの使い分け

ストレス・コーピングは同時に複数使われることがあり、どれが良いというものではありません。一般に、問題状況を何とか変化させることができると判断された時は、問題焦点型のコーピングを行います。一方、状況が膠着していてどうしようもない、変えられそうもないと判断すると情動焦点型を取る傾向があるようです。
ただ、一方のコーピングが他方のコーピングを抑制し、新たなストレスを生じさせてしまうこともあるので、適切なコーピングを柔軟に使い分けていく必要があります。

環境と人間、双方向の影響

ラザラスらの理論は、従来の「ストレッサーがストレス反応を引き起こす」という一方向的なモデルに対し、「環境と人間は双方向に影響を及ぼし合う」という考えに基づいています。その特徴は、環境からの要求に対する認知的評価(モノの見方)及び対処能力についての評価が、ストレス反応のあり方を規定するとした点にあります。
さらに、ストレス・コーピングの成否を規定する要因として、「ソーシャルサポート」の役割が指摘されています。ソーシャルサポートとは、種々の問題を抱えている個人に対して、周囲から与えられる支援のことです。

適度に他人を頼るのが大事

日本では、とかく「他人に迷惑をかけてはいけない」というしつけが行われます。しかし、たとえ大人であっても、全ての問題や課題が独力で解決できるわけではありません。時と場合によっては、正直に弱音を吐いて、他者の支援を求めることも大切だと思います。適度な依存ができることも、ある意味では、社会人として成熟したパーソナリティの証ではないでしょうか。

ネアカのびのび通信

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