RYUKAミニ講座3:生活設計のすすめ

“変額保険”

バプル期に、“変額保険”という生保商品がおおいに売れたことがある。
一般の生命保険では保険料も保険金も、加入まえに決められた金額が途中で変えられることはない。確定金額の受取りと支払いこそ、保険会社の重大な任務である。そのためにリスク分散をベースとした資産運用ルールの遵守が求められる。名目的な“安全性”が長期にわたり維持されねばならない。
この方式のもとで営まれる生命保険にとって最大の弱点はインフレである。生命保険の大半は長期契約であるから、長いあいだにはインフレが起きるかもしれず、そうなると保険金の価値がめべりする。この弱点を克服するために考案されたのが変額保険である。株式がインフレに強いという性質に着目して、変額保険では運用資産の大半を株式に集中的に投資する。保険金額は定額でなく、保険金支払のときの株価水準に応じてかわる。

“収益性”と“危険性”

日本の生命保険業界は変額保険をインフレのときには導入せずバブル期に売りだした。おりからの地価高騰で相続税が増大し、地主たちには先祖伝来の土地の遺産相続がむずかしくなった。そこで変額保険の登場である。地主たちは、銀行から土地を担保にして融資をうけ、一時払い保険料にあてる。期間中に死亡すれば値上がりした株価によって保険金額はおおきく増えているから、相続税を払い、さらにローンも返せる。こういって保険会社は勧誘した。“危険性”の説明はなく、ひたすら“収益性”が強調され、銀行も販売に関与したという。
バプルがはじけると、目論見ははずれた。株価は暴落して保険金はめべりし、地価もさがって担保割れをおこし、土地を売ってもローンを返せなくなった。加入者はにっちもさっちもいかなくなり、結局、多くの訴訟が起こり、そしてその大半で会社側が敗れた。
数年前のミニ・バブルのときには“変額年金”が流行した。あぶないなとみていると、案の定、金融危機をきっかけに株価がさがり、変額年金はその余波をもろにうけた。保険会社も銀行もむろん加入者も、十年かそこらまえの教訓を学ぶことなく、きれいに忘れたのであろう。
二回目の“変額騒動”であるから、こんどこそ教訓を学んで欲しいとおもう。

目標をひとつに絞る

金融商品には一つの目標をもとめよう。安全であり、同時に高利回りの商品はない。保険には安全な保障を期待し、高収益はべつの商品にもとめる。欲望というメガネをかけると世の中がゆがんでみえる。ことわざに「二兎を追うものは一兎をもえず」というではないか。

ネアカのびのび通信

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